2016年1月23日(土) ネズミに勝てないネコ?

JR両国駅を下車し、10年ぶりの日本人力士の優勝でわく国技館とは反対方向に歩いていくと、回向院に突き当たる。1657年の明暦の大火の犠牲者を葬ったことから始まるこの寺は、諸宗山無縁寺回向院という正式名称のとおり、刑死者・水死者から横死者など無縁仏も、宗派にこだわらずに埋葬するし、人間のみならず、生あるものはすべて供養するという理念から、境内には「猫塚」「小鳥供養塔」「軍用犬・軍馬慰霊碑」などさまざまな動物の供養碑が立ち並んでいる。

ネズミ小僧山東京伝・京山の兄弟、加藤千蔭など有名人の墓もあるのだが、一番人気は何と言っても大泥棒・鼠小僧次郎吉だ。と言っても、刑死した次郎吉はここには眠っていない。立っているのは供養墓である。説明書きには「鼠小僧の墓石を欠き 財布や袂にいれておけば 金回りが良くなる あるいは持病が治るとも言われ…」とあるように、今も墓(ではなく、削られて今や形も判然としないお前立の石)を削って、ご利益を授かろうとする老若男女の姿が絶えない。

ネコ塚ところで、ネズミ小僧の供養墓の隣には「ネコ塚」がある。かわいがってくれた魚屋が病気で稼げなくなり、やむを得ず商家からお金を盗み出した猫が、見つかって殺されてしまった。魚屋と事情を知った商家の主人が、猫を憐れんで回向院に葬ったという話。一時は「ネコの恩返し」として評判になったネコだそうだが、隣のネズミ小僧に比べるとパッとしない。やはり、パワースポットになるには、人間に何かご利益を授けなければならないようだ。

2016年1月10日(日)わあ、これ、ほんもの?

そういえば、今年になって上野の東京国立博物館(トーハク)に行ってないなあ、今日はあったかいし、たまには外にでなくちゃ、と思ってでかけた上野は、いつものとおり人が多い。アベック、親子連れ、楽しそうにみんなどこに行くのだろうか。

さすが、人気の松林図屏風

さすが、人気の松林図屏風

美術館や博物館は、お正月には、いつもと違う展示物を出してくれるので、ありがたい。トーハクも毎年、「博物館に初もうで」で楽しませてくれる。今年も長谷川等伯の国宝「松林図屏風」、池大雅の国宝「楼閣山水図屏風」などの大物から、干支の申にまつわる可愛い特集など盛りだ くさん。近ごろ若い女性の間で人気の刀剣も、国宝や重要文化財級のものが並んでいる。撮影禁止のマークがついていない限り、フラッシュをたかなければ展示物の撮影もOKだ。

ところが、北斎の「 冨嶽三十六景・凱風快晴」「神奈川沖波裏凱風快晴」など、「えーっ、これ本物?」と、めったに見られない有名な浮世絵に目がくらみ、シャッターを押したとたん、私のスマホからフラッシュが! 間髪をおかず「お客さまっ!」と鋭い声がかかった。「すみません、間違えました」とひたすら陳謝。

正月早々、大勢の前で叱られたのは恥ずかしかったが、あのタイミングの良さはさすがにトーハク。お叱りも本物だった。

2016年1月6日(水)すごいぞ!日本のからくり技術

江戸東京博物館でからくり人形の実演を見た。見せてくれたのは東野進氏が座長をつとめる「夢からくり一座」の皆さんと大小のからくり人形たち。

からくり人形といえば、高山祭りなどで高い屋台の上で演技するのが有名だが、今回は目近で見るので、面白さが違う。たとえば「連理返り」は、つながっている2体の人形が交互に宙返りしながら、階段を降りていくという、オリンピックで金メダルをとるような見事な芸を披露してくれる。体に組み込まれた棒のなかの水銀が移動することによって動くのだと人形の着物を脱がして説明してくれたが、なめらかな動きに感心するばかり。「弓射り童子」の弓をつがえるときの真剣さ、みごとに的にあたったときの嬉しそうな顔など、表情の豊かさに驚かされたし、大型の「甲冑弓射り武者人形」の豪快さもすばらしかった。

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見事に「竹」を書きました!

私が一番気に入ったのは、「文字書き人形」。この人形は幕末のころにアメリカに渡ったものを、座長の東野氏が迎えに行って里帰りしたのだが、かなり修復が必要で、東野座長は大変苦労をされたことがDVDで紹介されていた。

「文字書き人形」の名のとおり、見物人の前で「梅」「竹」「松」「寿」の4文字を書きわける。なかなかの男前で、紙の前に座って神妙に筆をとり、文字を書き終わってから、客席に向き直り、拍手をうけるときのドヤ顔がなんともいえない。日本の技術力の高さに、誇りを感じさせてくれるからくり人形たちに感謝!!

2016年1月1日(金) 年のはじめの…

初詣に浅草まででかけた。歩きなれた隅田川テラス。国技館の前では、門松の前で外国の人たちが並んで写真を撮っていた。門松があるとそれだけで正月の気分になる。隅田川も今日ばかりは動いている船が少ない。たくさんの水鳥たちがのんびりと波に揺られている。あれなむ都鳥、正式名称ユリカモメ。チドリ目カモメ科カモメ属の東京都の鳥だ。

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初春の隅田川

吾妻橋までくるとだいぶ人が多くなった。橋を渡ると浅草寺、のはずだが、なんと見渡すかぎりの人の波だ。警備の人が、参拝する人は列のうしろに並んでくださいと叫んでいる。どのくらいかかるか聞くと、「雷門まで1時間半か2時間、そこから本堂まで1時間だろう」とのたまう。すみません、観音さま、すいているときに出直します。

どこの寿司屋、ラーメン店、スイーツの店の前も行列だ。「まもなく神の裁きがおりるでしょう」と叫んでいるグループさえいる。振袖を着ている若い女性にカメラを向けると、中国の人だった。

こんな人混みを、人々は自爆テロを心配することなく、のんびりと歩いている。隅田河畔にはまだ、ブルーシートや段ボールで作ったホームレスさんたちの家が並んでいるのだが、そうした人たちも、突如、爆弾で吹き飛ばされる心配もせずに寝ていられる、これが日本の正月だ。今の世界情勢では、これはめでたいと言うのだろう。

                    めでたさも 中ぐらいなり おらが春 一茶