ブログ「千まで届け―国宝見て歩き」

日本に国宝っていくつあるの?と調べたら、だいたい千プラス百ぐらい。これまでに自分が国宝をいくつ見てきたか、これからいくつ見られるか、数えてみることにした。皆さんも、あそこの国宝がよかったよ、というものを教えてください。

私の好きな国宝2~6. 土偶5点

国宝土偶1.縄文のビーナス(縄文時代中期、長野県茅野市出土)

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国宝土偶2.縄文の女神(縄文時代中期、山形県出土)

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前者2点が縄文中期の土偶にたいして、これからの3点は縄文後期のもの。それぞれに実に個性的だ。
この土偶は、体の中が中空として作られたもののなかでは、最大だそうだ。特徴は、上半身と下半身に刻まれた細かい模様だろう。出土が北海道であることから、入れ墨かもしれない。説明によると、足のあいだにある管のようなものは、中空である両足にも、他の部位と同じように火が回るようにしてある工夫だとある。それにしても、この面だましいは男か女か、はたまた中性か。不思議な存在だ。

 

国宝土偶4.仮面の女神(縄文時代後期、長野県茅野市出土)

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理由はよくわからないが、なかなか人気の高い土偶らしい。何を祈るのか手を合わせ、つぶやくように唇をうごかしている感じだ。面構えもよく、ドンと来いという感じだ。眉も目もしっかりと描かれている。めだつ全身模様は入れ墨か。まあよくこの複雑な形が壊れずに現代まで生き残ったものだ。ちなみに、一見、武具をつけているようで男性っぽいが、これも女性。証拠は直接見て、ご自分でお確かめください。

 

 

Illustrations by Mika

私の好きな国宝 1.仁科神明宮(にしなしんめいぐう)

DSC00741国宝の社殿50%

仁科神明宮の社殿、左から、 本殿(国宝)、 釣屋(国宝)、中門(国宝)

 私の国宝めぐりの一番に何を選ぼうか、かなり迷ったが、今年(平成28年)6月に訪れた長野県大町市に鎮座する仁科神明宮を選んだ。

 参道脇に立ち並ぶ目を見張るほどの大杉、そしてヒノキの大木などが茂る社叢は長野県の天然記念物である。その中に埋もれるように鎮まる、日本最古の神明造りのお宮・仁科神明宮。その荘厳な前に佇むと畏れと尊さで身が引きしまる思いがする。

   古来の神明造の様式を正確に伝えるものとして、昭和28年に本殿・釣屋・中門が国宝に指定された。DSC00735社叢に鎮まる50%

   伊勢の神宮に倣い、二十年に一度に行われる式年遷宮の制度が、五百年以上にわたり厳格に守られているのも、他に例をみない。しかも遷宮の様子を伝える棟札が一枚も欠けることなく保存され、そのうちの27枚が国の重要文化財に指定されている。そのほかに鎌倉時代の懸仏五体も重要文化財。

 それら数多くの重要文化財が、宝物殿の中にずらっと並ぶ様子が圧巻だ。神明宮を拝した後には必ず、宝物殿も拝観することをお勧めしたい。

 

 

ごあいさつ

国宝とは、「国の重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝」として、文部科学大臣から指定されたものだという。「国宝」「こくほう」「くにのたから」… なんていい響きなんだろう…。

文化庁によれば、平成28年7月1日現在、日本の国宝の数は1,097だそうだ。せめて見られるものだけでも、自分の目で見て歩きたい。国宝好きの先輩は大勢いるが、人は人吾は吾なり、初心者は初心者なりに、1、2と数えて、いくつの国宝を見てきたか、これからいくつ見ることができるか、そうだ、千まで届け、私の国宝探訪!

ということで、次回から私の見た国宝をひとつずつ紹介していくことした。順不動。

ちなみに、国宝のなかには撮影禁止のもの、個人所有で拝観できないものなどが多数あり、その場合は止むをえず図録などを参考にしたので、ご勘弁を。さあ、歩き出そう、千にむかって!