2016年3月11日(金)『つなみのえほん』

つなみのえほん

今年もまた3月11日がやってきた。日本じゅう、いや世界中を震撼させた大地震とそのあとの大津波。そのことは改めてここに記す必要もなく、人々の記憶に鮮明に残っている。

あの日、東京の事務所で私たちがテレビで見たものは津波が人々を襲う言いようもない恐ろしい光景だった。その数か月後、私たちはかの地を訪れた。災害の爪痕に言葉もない私たちを、現地の人々は優しい笑顔で迎えてくれた。

その時に知り合った人のひとりが、この本を送ってきてくれた。『つなみのえほん』。宮城県南三陸町のくどうまゆみさんがむすこのゆうすけくんに書いたじっさいに経験したつなみのはなし。

神社であるまゆみさんの家はさいわいにも地震では無事だった。でもそのあとに襲ってきた巨大な波また波。「ここは高いからだいじょうぶ」というおばあちゃんをひきはがすように連れて、高台に逃げたまゆみさん一家。すぐそばを、家が自動車が電信柱が、滝のように海へ流れてゆく。

「やめて やめて 津波に叫びながら にげる」

「にげて にげて もっと高いところ もっともっと高いところ」

まゆみさんは、このときの経験を決して風化させないために、この本を書いた。私がこの本の表紙をブログに載せる許可を得ようと電話した際、出版社は「お願いします、一人でも多くの人の目に触れるように」と言った。

大地震とそれに続く大津波は、日本に住む私たちにとって遠い未来の話では決してない。その時私たちは、「てんでんこに(一人一人がそれぞれに)」逃げていかなくてはならないのだ。

『つなみのえほん』 ぶん・え くどうまゆみ /㈱市井社/03-3267-7601/1200円+税

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