2016年4月25日(月)春の一日、見沼たんぼを歩く

前日の雨もあがり、すっきりと晴れた4月の月曜日。埼玉県の見沼にある天然記念物クマガイソウの自生地にでかけた。

見沼はさいたま市と川口市にまたがって存在していた巨大な沼である。現在はかなりの範囲が開発されてしまったが、それでも今なお残る広い水田は「見沼田んぼ」と呼ばれ、いろいろな動植物が生息している。

今回の目的であるクマガイソウは、大きく特徴的な花の形が、昔の武将、熊谷直実が背負っていた母衣(ホロ)に似ていることから名づけられたもの。多年草だが、全国でも自生地は少なく、絶滅が危惧されている。

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 クマガイソウ

自生地は、農家の広い竹藪の庭の中にあり、入り口で維持協力金300円也を箱に入れ、だれもいない庭に「コンニチハ」と声をかけて入った。入るとすぐにクマガイソウが咲いていた。歩いていく足元には、ホウチャクソウ、アマドコロ、ニリンソウ、チゴユリ、ツルニチニチソウ、キンランなどが乱れ咲き、目をあげるとモッコウバラが鮮やかだ。坂をくだると、これも天然記念物のイカリソウの自生地で、その名となった碇(イカリ)に似たピンクの小さい花がけなげに咲いている。

ぐるりと歩いてくると庭先にこの家のご主人だろうか、年配の男性が座って写真を眺めていた。

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 イカリソウ

「花がきれいですね」と声をかけると、「昔はこんなだったんだよ」と一面に咲くクマガイソウの写真を見せてくれた。なるほど、以前はこれほど豊かに咲いていたのか。

「難しいよ、竹藪の中に咲く花も、何もしないのに少なくなったり、位置を変えるしね。春にはどんどん生えてくる竹を間引きして、冬には雪で竹が折れるから雪おろしして」

「雪が降るんですか」「30センチもつもる。そんな話をすると、じゃ今年の冬は手伝いにくるよ、という人たちもいるが、実際に来たことなんかありゃしない」

「でも、きれいですもの。私なんかこれが楽しみで、3年続けてきています」

「来年もくるかい」「はい、きます。ですから、お元気で花たちの世話、お願いします」

見沼たんぼ約束してしまったので、来年もくることになった。

野鳥の声を聞きながら、花いっぱいの見沼たんぼを横切り、バス停まで歩いていくと、芝川の向こうに埼玉新都心の高層ビル群が並んでいるのがみえた。

 

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