2016年1月30日(土) サクラサク!

Tさんという中国からの留学生の、日本語の勉強のお手伝いを始めてから、一年以上が過ぎた。3年半前に日本に来たとき彼は、日本語をまったく話せなかったそうだ。大変意思の強い男性で、日本語学校に2年間通って日本語を学び、その間に日本語検定試験をうけて1級に合格し、さらに某大学の大学院を受験し見事にパスした。しかもその間に毎朝のジョギングで、80キロの体重を60キロに落としたというから、意思の弱さを自覚する私は、耳が痛いことばかりだ。

アルバイトをしているせいか、日本語の会話は上手だが、やはり時々間違った敬語の使い方をしたり、難しい語が読めなかったりする。そういう間違いを指摘したり直したりするのが私の役目なのだが、実をいうと雑談が多く、1時間30分のレッスン時間はいつも笑いながら楽しくすぎていく。

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彼は十数社におよぶ日本の会社の試験を受け、めでたく今春からある会社に就職することになった。修士試験もパスした彼を、私はレストランに誘い、いつものように楽しく時間を過ごした。おそらくこれが学生としての彼との最後の食事になるだろう。結婚したら必ず知らせてよ、と笑いながら言う私に、彼は急に真面目な顔をして、「本当にありがとうございました。ボクが就職して最初の給料をもらったら、まず一番に梅田さんを食事に招待します」と言った。

思いもかけぬ言葉に胸がいっぱいになった私は言葉が出ず、一年以上の付き合いで初めて彼と握手をして、別れを告げた。彼のこれからの長い人生が、幸せで実り多いことを祈らずにはいられない。

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