2015年8月13日(木)国の宝を守るということ

大阪の藤田美術館が収蔵する美術品を、初めて目にする機会を得た。六本木のサントリー美術館で現在開かれている「藤田美術館の至宝 国宝曜変天目茶碗と日本の美」がそれだ。
明治の実業家・藤田傳三郎氏とご子息の平太郎・徳次郎両氏が、長年収集された美術品の数々は、広く知られている。しかし、常に大阪の藤田美術館で開催され、館外で公開されたことはなく、かくいう私も、一度も藤田美術館に足を運んだことはなかったので、東京でこの国内有数のコレクションを見られることが分かったときは、いささか興奮した。はたして、会場に入ると最初に目に飛び込む快慶作「地蔵菩薩立像」(重要文化財)の気高い美しさに多くの人が息をのみ、それをはじめとする美術品の数々に、会場内は静かな興奮で満たされていった。
明治初年の廃仏毀釈の嵐で、多くの歴史的仏教美術品が海外に流出していく様子を見て、傳三郎氏は私財をなげうって、流出阻止につくした。その結果、藤田美術館の所蔵品の9件が国宝に、52件が重要文化財に指定されているという。膨大な私財を投じて、国宝級美術品の海外流出を防いだ藤田傳三郎氏とその遺志をついだご子息たちこそ、真の国の宝といえよう。昨今話題の国立競技場の建設費に「国がたったの2500億円出せないのか」とのたまわった某元首相は、いったいどう思うだろうか。

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