秋9月がくると、決まって訪れるそ律儀な客がいる。私はその訪れを、一年間、待っている。
その名は、ヒガンバナ。
その名にたがわず、秋の彼岸がちかづくころになると、ニョキッと花径が顔を出し、あれあれと思っているうちに、先端に芯の長い朱赤色の花を咲かせる。
花の色から曼珠沙華とも呼ばれるこの花は、鱗茎に毒をもつので、ネズミやモグラの害を防ぐために、田のあぜ道に植えられた。嫌いという人もいるが、私はとても好きだ。
今年は気候が不順だったせいか、なかなか地中から茎を出さず心配したが、彼岸の中日を過ぎて2日目に、やっと花を咲かせた。隣家の白いヒガンバナは、彼岸の入りを待たずに花が咲いたのに。
花が咲き終わるころに、線形のスッキリした茎が伸び、春に枯れる。葉は花を見ることはなく、花は葉を見ることがないので、別名「葉見ず花見ず」というそうだ。誰がつけたか、粋な名ではないか。
ヒガンバナが盛りをすぎるころになると、金木犀のよい香りがただよい出す。私の小さな庭にも、それなりに秋がやってくる。