2016年 ロシア若手日本文化研究者育成

2016年の論文発表者として選ばれたのは、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター研究員のバブコーワ・マイヤー博士で、論文タイトルは「道元禅師――活動と著作。正法眼蔵」です。

バブコーワ・マイヤー著
道元禅師――活動と著作。正法眼蔵(翻訳)
 本論文は、鎌倉時代の優れた伝道者である道元禅師(1200–1253年)の評伝であり、その思想と行動の総合的研究である。世界的に広がる曹洞宗の開祖である道元禅師は、宗教家、禅師、座禅を唱えた人物というだけでなく、現在でも奥深い思想家として名高い。道元禅師は矛盾した様々な考え方を結合させられた僧である。
 道元という人物は、不立文字と教外別伝を原則とした禅宗の禅師であった。鎌倉時代の仏教を改革し、釈迦如来の真実の教道を復興できると信じた。高貴な家族に生まれながらも、一生世間の価値や財貨を批判し、貧乏な農業従事者のなかに大勢の人を集めたり、修道院での活動だけを認められた。禁欲したり、多くの弟子をもち、貴族たちから庇護を受けたりもした人物である。
 道元は知識が深く、文学の才にもたけ、自身の才能を和歌や思想書などで十分に表した。道元の思想や議論は、現代の社会でも本当に生きるものであり、筆者は、道元の考え方を研究すればするほど、ほかの読者も興味をもつものと信じている。
 本論文の内容は以下の通りである。「序文」は作者と道元の思想との出会いを語り、現在道元研究を検討している。第一章「仏法道元の人生」は、歴史上と伝承上の道元の生涯を比較している。第二章「道元の著作」は、「普勧座禅儀」、「学道用心集」、「三百則正法眼蔵」、「正法眼蔵随聞記」、「永平廣録」などを分析している。「正法眼蔵」の翻訳は添加になる。この作品には、道元の教え方がもっと明らかになる。
 本論文は日本史研究者、宗教史研究者及び日本文化と仏教思想に関心がある読者向けである。(無断引用禁止)

【著者紹介】

バブコーワ・マイヤー。
モスクワ国立大学哲学部宗教学科卒業(平成14年)。哲学博士。ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター研究員。専門は日本宗教(神道と仏教)の思想と歴史、禅宗と現代世界。