日本研究者が集い、日本古代史史料の訳注問題を探求

 2017 年 11 月 18 日、南開大学日本研究院主催の「日本古代史史料訳注における諸問題」と題する学術シンポジウムが、当該研究院四階国際会議室にて開催された。

 中国社会科学院徐建新研究員、日本早稲田大学島善高教授、天津師範大学王暁平教授、北京第二外国語大学馬駿教授、清華大学劉暁峰教授、浙江工商大学江静教授、華中師範大学占才成先生、深圳大学高偉先生、天津外国語大学楊立影先生、南開大学外国語学院劉雨珍教授、同孫雪梅準教授、同于君先生、南開大学日本研究院院長劉岳兵教授、同李卓教授、同王玉玲先生など多数の学者が本シンポジウムに出席した。また、南開大学日本研究院、同外国語学院日本語学科の修士・博士課程の学生のほか、日本国学院大学、清華大学、吉林大学など国内外複数の大学からも若い研究者の参加があり、まさに「群賢みな来たり、少長すべて集い」と言える会議である。

 

会議初頭、劉岳兵教授は本シンポジウムの主旨について説明を行った。更に劉教授は、2012 年に「原典日本研究プロジェクト」が発足した事、訳注チームの結成に際して、王海燕、劉雨珍両教授と相談した事など様々な事を回顧し、また本シンポジウムの協賛である「南開大学梅田善美日本文化研究基金」の設立過程についても詳細に紹介した。劉教授は、「原典に回帰」する事が中国の日本研究において最も重要かつ必要である事を強調し、研究者に「史料との格闘」的研究態度を備えるべきと呼びかけ、「系統的史料整理と資料集の出版状況は、当該分野研究水準のパロメーターであり、その分野における研究の成熟度の表れでもある」と指摘した。「系統的日本史史料の整理及び訳注は、歴代の中国日本史研究者の夢であり、また現在では学術研究の環境がより良くなっており、その夢を実現させるために努力する責任が私たちにあるのではないか」と熱く語った。

 この度のシンポジウムは、主に占才成先生の『古事記・上巻』、および王海燕教授の『日本書紀・神代巻』の訳注問題をめぐって討論を行った。午前中の会議において、占才成氏は、周作人氏及び鄒有恒・呂元明両氏訳注の二種の『古事記』訳本の位置づけ、意義を論じ、また校正・注釈・翻訳三つの観点から、自身の『古事記・上巻』訳注作業について詳細に紹介した。参会の学者専門家は、氏の訳注を高く評価した一方、歴史学、哲学、民俗学、言語学、考拠校注方法などの角度から意見を述べられた。議論は神道歴史研究、神道哲学思想が『古事記』訳注との関連性、原典の訳注が中国また日本における先行研究に対する吸収状況、和歌の翻訳において、如何に合理的、かつ詩的処理ができるのか、また語彙翻訳・句点の運用及び表現方法の規範化等多くの問題にまで及んだ。徐建新研究員は、日本古代歴史の沿革、王権の強化及び日本古代民族の形成の角度から「記紀」神話の歴史的地位、社会的意義に熱弁を振るい、参会者に『古事記』、『日本書紀』を全体的に把握する視点を提示した。午後の会議において、王海燕教授は、『日本書紀・神代巻』訳注作業状況を紹介した。王教授は、訳注チームに参加また訳注作業の過程を回顧し、担当課題及び自身の経歴に関連しながら、歴史学の視点から訳注作業における体例、注目点、底本の採用、訳注の特徴、及び『古事記』訳注との差異、神話と古代日本人の自然観などの問題を論述した。参会者たちは、訳注作業の体例と底本校読の重要性を指摘し、更に中国古代文化、哲学思想が『古事記』、『日本書紀』との関連性を見出し、そして中国文化の特徴を帯びる解読をしようと強調した。多分野間の交流、協力が、原典翻訳校注を推進することにおいて非常に重要であると指摘した。

 総合討論は、劉岳兵教授の司会の下で粛々と行われた。参会の研究者とも、原典訳注の読者群の想定、基本的史実の標注、中国文化の特徴の表現、先行研究の客観性・規範性、訳注の凡例などの問題について、幅広い議論をした。また参会の若い研究者たちは、自身の研究体験に基づいて、訳注作業についての具体的意見を呈した。南開大学日本研究院及び同外国語学院日本語学科博士課程の学生は、一読者の視点から、読後の感想を語り、また意見を述べた。

 最後に、王暁平教授は閉会の言葉を述べた。王教授は「原典日本」訳注チームの作業を高く評価したのち、若い学者たちに対して、自分たちの研究生涯を全うすること、学術品格を備えること、自身の研究成果が歴史的検証に耐えられることができるように激励し、また日本歴史文化知識を普及するために、「原典日本」訳注を早急に世に出すことを期待すると述べた。
 シンポジウムは長い拍手の中で終わりをつげた。
(費清波撰文、温娟翻訳)

 

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