中国語『原典日本神道思想史』(5巻本)出版

梅田善美日本文化研究基金による初の海外への助成金は、中国南開大学日本研究院の劉岳兵教授による「『原典日本神道思想史』の出版企画」に寄贈された。この企画は、神道の基本的文献資料を中国語に翻訳し解説することにより、中国の神道研究者・日本文化研究者および学生たちに寄与したいという、劉岳兵教授のかねてからの念願だったもの。梅田善美が生前、長年の親交をもち深い信頼関係にあった劉教授によるこの遠大な企画への助成金寄贈は、日本の梅田善美日本文化研究基金本部で問題なく支持され、決定した。

『原典日本神道思想史』の出版企画について     劉岳兵

この度、梅田善美日本文化研究基金の助成金を得て、かねてより企画していた「原典 日本史料シリーズ」の一環として『原典 日本神道思想史』の出版作業を進めております。
日本の原典はいうまでもなく日本語で書かれておりますが、これを系統的に、しかもなるべく正確に中国語に翻訳し解説することは、中国人の日本認識をより全面的、客観的にし、さらに中国における日本研究をより深く推進することに対し如何に重要であるかということを、私は繰り返して強調してきました。
日本神道についての中国学界における研究業績は、今までにある程度進捗してきました。しかし、一般の民衆、或いは一般の知識人の間での神道についての認識や理解は、まだ不十分であり、或いは誤解しているところが多い分野であることは事実であり、否定できません。日本神道思想の各側面を含める歴史的全貌、その形成及び発展の過程を系統的に史料に基づいて解明することが、この企画の目的であります。
『原典 日本神道思想史』の内容は、『古事記』神代巻から「神道指令」まで、思想史を中心に日本神道の基本的史料を編集し、そして中国語に翻訳(解説・注釈付け)することであります。その最終成果としては『原典 日本神道思想史』上古編・中世編・近世編Ⅰ(国学)・近世編Ⅱ(儒学など)・近現代編の中国語版を、数年内に出版することを企画しております。

劉岳兵(1968-) 2001年中国社会科学院の哲学博士号を取得。現在、南開大学日本研究院劉岳兵教授で同院の副院長、中華日本哲学会副会長を兼任。2012年、中国教育部の「新世紀優秀人材支持計画」に入選した。研究分野は日本思想史、中日思想文化交流史。主な著書には、『日本近代儒学研究』(2003年商務印書館)、『中日近現代思想与儒学』(2007年北京生活・読書・新知三聯書店)、『日本近現代思想史』(2010年世界知識出版社)、『近代以来日本的中国観第三巻(1840-1895)』などがあり、訳書は、『近代中国の知識人と文明』(佐藤慎一著、2006年中国語訳版『近代中国的知識分子与文明』、江蘇人民出版社)、「日本の思想」(丸山真男著、2009年中国語訳版『日本的思想』(共訳)、北京生活・読書・新知三聯書店)など多数。