暖かな2月のある日。里山には小川が流れ、足元にはコバルトブルーの可憐な小花が咲く。花の名前は…、気の毒なので書かない。
あれっ、あの角のあれはなんだ? もちろんよく通る道だから、何かはわかっている。お地蔵さまだ。いつもきれいに花などが供えられているのだが…。
でも、これはいつもと違う。この豪華さはなんだ。ひな祭りが近いせいか、花や果物、子どもの好きそうなお菓子やパンやクッキーなどが、びっしりと供えられているではないか!
拝むのも忘れてボーゼンと立ちつくす私のそばに、老人が「おお、これはすごい」と言って立ち止まった。「ここで交通事故でもあったのかな」
でもこれはとても1軒の家で用意できる量ではありませんよ、などと話していると、今度は自転車でとおりかかった近くに住むという年配のご婦人が、「これはね、水子の供養だから、食べてあげるといいんだよ」と、パンとミカンを2つ3つ、自転車のカゴにほおり投げて走り去った。なるほど、長く生きている人はよく知っているものだ、と我が身も忘れて感心する私だった。