2016年2月23日(火) 月にカエル?

先日の寒い夜のこと。友人に会うために、薄暗い道を急ぎ足で歩いていたら、グニャと何やら柔らかいものを踏んだ。ヤダ! あわてて飛びのき、電灯の光で透かしてみると、なにやら黒いものが…。しかもピクピクと動いている気配だ。えーっ、ひょっとすると、ネズミ? ネズミは私の世界の三大嫌いなものの一つである。あとの二つはって? 絶対に言わない。

でも幸いなことに、ネズミではないようだ。目をこらして恐る恐る近づいてみると、なんと、カエル! 冬眠から目覚めたところを自転車にでもひかれたのだろうか。とにかくこんな所で寝ていると今度は車にひかれるよ、と心優しい私は、できるだけ触らないように、そばにあっ月にカエルた棒の先で草むらに向かってひっくり返した。

それから30分。用事が済んで同じ道を、またおっかなびっくりで通ったのだが、カエルの姿はみえなかった。車に轢かれた様子もなく、ひと安心だ。どこかに逃げたかな。

川の堤防に沿って歩いていると、家並みのうえにまん丸い月が出ていた。そうだ、今夜は満月だ。あのカエルは、きっと月に帰ったのに違いない。中国では月にはカエルが住む。日本でも、月にはウサギやカラスのほかに、カエルが描かれている絵もあるもの。

カエルそう思ってみると、いつもはウサギが餅をついているような月の影が、今日はやけにカエルそっくりに見える。「カエル、カエル、なに見てカエル」と小さい声で歌いながら夜道を帰った。

2016年2月1日(月)「子どもの貧困」って?

このところ悲惨なニュースが続いているが、先日は自分がかかわっている活動のなかでも、子どもの貧困のことで胸がつぶれる思いがした。

昨年から「『なくそう! 子どもの貧困』全国ネットワーク」に参加している。と言っても、ときどき寄付金を送る以外は、何をしているわけでもない。ネットワークに入った途端、送られてくる情報量の多さと、全国で子どもの貧困をなくすために活動している人たちの熱心さに、圧倒されるのみだ。

もちろん、彼らの働きだけで世の中にはびこる子どもの貧困はなくなるわけではない。だが、こうした「かわいそうな子どもたち」のことは、日本の一般の人にとって時々雑誌で読んだり、短いニュースで聞くぐらいで、あまり身につまされることはないようだ。私もそうだ。私の回りの友人知人たちもそうみえる。

でも平和で、物がありあまっているように見えるこの平成の時代にも、毎日のご飯が食べられない子供たちは現実に存在しているのだ。空腹に耐えられず、「ティッシュって甘いんだ子どもよ」と言って、町角で配られるティッシュペーバーをおやつ代わりに食べている子どもたち。そして、参加したシンポジウムで、地域のつながりづくり・子どもの居場所づくりの実践報告を、黙って聞いているだけの無力な自分。

政府が経済界などと連携して呼びかけている「子供の未来応援基金」の知名度は低く、集まった寄付金は驚くほど少ない。政府の力の入れなさの程度がわかるというものだ。みなさん、関心があってもなくても、一度、ホームページをのぞいてほしい。

「子供の未来応援プロジェクト」 http://www.kodomohinkon.go.jp/

「なくそう子どもの貧困」全国ネットワーク http://end-childpoverty.jp/

2016年1月30日(土) サクラサク!

Tさんという中国からの留学生の、日本語の勉強のお手伝いを始めてから、一年以上が過ぎた。3年半前に日本に来たとき彼は、日本語をまったく話せなかったそうだ。大変意思の強い男性で、日本語学校に2年間通って日本語を学び、その間に日本語検定試験をうけて1級に合格し、さらに某大学の大学院を受験し見事にパスした。しかもその間に毎朝のジョギングで、80キロの体重を60キロに落としたというから、意思の弱さを自覚する私は、耳が痛いことばかりだ。

アルバイトをしているせいか、日本語の会話は上手だが、やはり時々間違った敬語の使い方をしたり、難しい語が読めなかったりする。そういう間違いを指摘したり直したりするのが私の役目なのだが、実をいうと雑談が多く、1時間30分のレッスン時間はいつも笑いながら楽しくすぎていく。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

彼は十数社におよぶ日本の会社の試験を受け、めでたく今春からある会社に就職することになった。修士試験もパスした彼を、私はレストランに誘い、いつものように楽しく時間を過ごした。おそらくこれが学生としての彼との最後の食事になるだろう。結婚したら必ず知らせてよ、と笑いながら言う私に、彼は急に真面目な顔をして、「本当にありがとうございました。ボクが就職して最初の給料をもらったら、まず一番に梅田さんを食事に招待します」と言った。

思いもかけぬ言葉に胸がいっぱいになった私は言葉が出ず、一年以上の付き合いで初めて彼と握手をして、別れを告げた。彼のこれからの長い人生が、幸せで実り多いことを祈らずにはいられない。