「あっ、この木、知ってる、プラタナス」と叫んだ私を、先輩は気の毒そうに、地面から葉を一枚拾って、「葉っぱが全然ちがうでしょう、これはユリノキです」といった。
「形がお祭りなんかで着る半纏に似ているでしょ、だからハンテンボクともいうんです」
とも。なるほど、ハンテンか、今の人にはハッピといったほうがわかりやすいかもしれない。たしかにそんな独特の形をしている。
プラタナスは大学に並木道があり、朝夕にその下を歩いていたので、知っているつもりだったのに、あらためて教えてもらうと、プラタナスとユリノキでは、葉の形はもちろん樹皮もまったく違っていた。
上野の東京国立博物館の本館前には、巨大なユリノキがある。前は「大きな木だな」と思ったが、今では「大きなユリノキだな」と思うようになった。秋にはオレンジ色にきれいに黄葉する。5~6月には花が咲くそうだ。英語でチューリップツリーというように、黄色と赤色のまじったきれいな花が咲くとのこと。高い木の上に咲くので、気がつく人が少ないそうで、私も見たことがない。来年の花の時期には絶対にみようと、今から楽しみにしている。