また来たの、東京のおばちゃん

 玄関に車の音! わあい、やっとお父さんとお母さんが帰ってきた。あれ、また知らないおばちゃんと一緒だ。
 「あら、ムーちゃん、元気だった。それにしても太ってるわね」って、おばちゃんだってじゅうぶん太ってるよ。あれ、このおばちゃん、見たことあるな。ボクは身体の割には頭が小さい。だから脳も小さいと思われてるけど、記憶力には自信があるんだ。そうだ、前に来た馴れ馴れしい東京のおばちゃんだ。
 おばちゃんは2階の部屋に通されて、「ムーちゃんが入り込むから、ドアにはカギをかけるようにね」とお母さんに注意されていた。よけいなお世話さ。
 食事が終わってお風呂に入り、お母さんとひとしきりおしゃべりをして、おばちゃんは「おやすみ」と2階にあがっていった。ボクが抜き足差し足、階段を上っていくと、あれ、ドアが少し開いてる。お母さんの忠告を忘れたな。

 そっとお部屋に入っていくと、おばちゃんはもう電気を消して、ベッドに入っていた。ベッドによじ登り、寝息をたてているおばちゃんに近づいていく。そっと頬に顔を近づけると、おばちゃんはびっくりして、目を開けた。そしてボクたちは闇の中で見つめあった。
 あれからボクを見るおばちゃんの目の色が違ってしまった。そして東京に帰ってからも、お母さんにボクのことばかりラインしてくる。お母さんは、これは完全にムーちゃんロスね、と笑っている。ボクってホント、罪な男だなあ。

 

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